【もりくる上級】箱根を森林アプローチ!自然観光をより楽しむための知識の森
もくじ ――
ハイキングコースの聖地「箱根」。自然やを誰よりも理解し楽しむための研究。
雨の多い火山地帯を知る
じつは地理的には伊豆半島の付け根にあり、神奈川・静岡両県にまたがっています。
もちろん富士箱根伊豆国立公園内にあるわけで、言わずもがな火山地帯です。
そのため多くの温泉が湧きだす箱根火山は、
新生代新第三紀(2,303万年前から258万年前までの時代)に積もった海底火山の噴出物を土台に、
直径約11キロメートルの2つのそれぞれ違った時代のカルデラで構成される3重式の火山なのです。
カルデラとは?
※オーストラリアの上空からみたカルデラ
火山地帯の大きな凹んだ地のことをいい、スペイン語で「鍋」「釜」という意味です。
日本では熊本にある世界最大級の直径約26㎞の「阿蘇カルデラ」が有名です。
箱根のカルデラ中央部にはこの地域の最高峰「神山」(1,438メートル)を筆頭に、「駒ヶ岳」、「二子山」
と続く7個の中央火山口丘があり、東側には「浅間山」、「屏風山」などの新規外輪山が並びます。
外輪山とは?
カルデラの尾根の部分を指します。
外輪山の尾根の部分は緩く平らな地形が多いため、富士山の火山灰が積もっています。
そう、「箱根の森」はそれらの火山と外輪山に発達しています。
雨降り箱根
「仙石原」では年間降水量が3,294ミリもある。要因として考えられるのが、駿河湾や相模湾の海洋の影響を受けて、
湿った空気です。冬季には降雪量はそこまで多くはないけれど、霧が多く発生するため若干鬱蒼とした雰囲気があるのはそのためかもしれない。
山の上の方は雲霧帯となって、霧がかかるゾーンがある。
箱根特有の自然と植物を観光
この箱根地域には1,822種の植物が記録されていて、その中には富士山や箱根地域にそれの分布の中心を持つ植物、
「フォッサマグナ要素」 と呼ばれる植物が多く含まれています。
フォッサマグナ要素の植物とは?
地質学用語で「大きな溝」を意味します。
伊豆半島が現在進行形で日本列島に衝突中。
この衝突で流れこんできた海洋性植物の流入によりできた特有の植物「フォッサマグナ要素の植物」といいます。
それらの植物は、この新しい火山環境で進化(分化)してきた、比較的に歴史の浅い植物なのです。
岩場や裸地に生育する「ヤマホタルブクロ」「フジアザミ」「ハコネツツジ」「イワナンテン」「キンレイカ」、草原性の「フジアカショウマ」「ハコネトリカブト」、森林や低木群落の中に生育することの多い「ハコネハナヒリノキ」、「サンショウバラ」「マメザクラ」「イヌヤマハッカ」「ツルシロカネソウ」などが、箱根の地に根付いた独特な植物です。
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※箱根神社元宮 箱根駒ヶ岳
古期外輪山の尾根や駒ヶ岳山頂には、「トクガワザサ」「ハコネダケ」「ミヤマクマザサ」の笹草で覆われているところが見られます。
30年前にはススキの草原であったところが、管理がされなかった現在はハコネダケの密生する場所に変化してしまったというところもあります。自然の遷移で急速にススキ高原が笹原に置き換わっているのです。もちろん、こういったことで群落の種の組成も変化して、草原性の植物の多くが消滅しています。
また、山岳信仰の箱根神社の元宮は"天空の社殿"といわれるパワースポットです。古来から親しまれ信仰されてきました。
仙石原を知る
箱根火山カルデラの内側に広がった海抜650メートル前後の高原で、約2万年前までは湖だったといわれています。ここでは今でも低層湿原が残っていて、箱根町営の箱根湿生が開設され、湿地のハンノキやヨシが広がる自然を見られれます。
この一帯の湿生植物群落の分布地は「国の天然記念物」に指定されています。
また、そのほかに面積約3万ヘクタールの園内には、日本各地に点在している湿地帯の植物200種のほか、草原や林、高山植物、珍しい外国の山草を含め、約1700種の植物が四季折々に楽しませてくれます。
※開園期間:3月20日~11月30日
台ヶ岳の斜面に一面に群生するススキも、春夏秋冬を通してさまざまな表情を持っています。
箱根で注目する木「ブナ」
日本の特有の木といえば、「ブナ」である。
箱根のブナ林に注目してみよう。
箱根のブナ林は金時山、山伏山、神山、駒ヶ岳、台ヶ岳などに分布しています。
ここに生息するブナは、葉がとても小さい表日本型のタイプで、「コバブナ」あるいは「フジブナ」と呼ばれる。
箱根で簡単にブナを中心に見るならば、舞台は金時山がおすすめだ。
それぞれがそこまで大きいというわけではないが、広範囲にブナ林がある。台ヶ岳や神山では、25メートルもある大きなブナが多く、箱根で
最も生長の良いブナが見られます。
湖尻峠から三国山へ
・ブナに生えるバイケイソウ
三国山山頂一帯の尾根は、湿性立地には「バイケイソウ」の生育が見られる。7月から8月にかけて開花の時期には珍しい淡緑色の花を咲かせます。ここは笹がない湿性型ブナ林です。
途中、ブナ林内を緩やかに登っていくと、四方に枝を張り出したブナの巨木がたくさんあります。
風の強いところでは10メートル内外。
幹は太く、根本から4~5メートルのとこから枝分かれをしていて、日本海側と比べると小柄であるものが多いです。外輪山は強風にさらされますので、その環境こそが生育に影響をあたえているのでしょう。
大涌谷では?
ブナ林が成立してもいいはずの立地の大涌谷などでは、硫黄からでる硫化水素の影響でブナは大変弱弱しいものとなっています。
そこでは高さ10メートルくらいの森林となっていて「ヤマボウシ」「コミネカエデ」「リョウブ」「アセビ」などが多い。低木に「コアジサイ」、草本に「ススキ」、「ハリガネワラビ」「シシガシラ」「ヒメイワカガミ」などからなる別の群落になっています。